ラノベの感想) 86―エイティシックス― (電撃文庫)

レーベル:電撃文庫
発行日:2017/2/10
著者:安里アサト
イラスト:しらび
ISBN:978-4-04-892666-9

サンマグノリア共和国はギアーデ帝国と戦争をしていました。
ギアーデ帝国は軍事大国で科学力が高かった。
完全自律無人戦闘機械<レギオン>を開発してしまいます。
そして周辺諸国全てに宣戦布告を行いました。
レギオン部隊は物凄く強かったのでサンマグノリア共和国は負けそうになってしまいます。
困ったマグノリア共和国は非道な決断を下しました。
戦争が始まる前は移民を募っていたのですが、手のひらを返してしまいます。
元々の住人である白系種(アルバ)以外の民を劣等種として強制収容所に収監してしまいました。
自国の周囲に防衛用の地雷原を作り上げ防衛用の砦を築きました。
砦の内側を85の区画に分けて引き籠る事になります。
強制収容所に収監した有色種(コロラータ)をエイティシックスと呼び人権を奪ってしまいます。
.
自分たちは優性種だと考える選民思想に毒されている人々が多数派を占める国になってしまいました。
アルバは無人兵器の開発に着手しました。
優性種である自分たちの兵器が敵国の兵器よりも劣っていると思いたくなかったようです。
馬鹿ですねー。
アルバは自意識だけは高いけど実際には無能力者の集まりだったようです。
当然の結果ですが、無人自律兵器の開発も難航しました、まあ、失敗したんだよ。
優性種の自分たちに作れないのはおかしいと考えたアルバは人権を奪い家畜と定めたエイティシックスを乗せる事で無人兵器を完成させました。
家畜は人間ではないので人は乗っていない、だから、無人兵器だと考えたようです。
これでは戦争に勝てる筈は無いよね。
.
建造された兵器はジャガーノートと呼ばれています。
四足歩行する大型兵器です。
自律兵器として成立していないだけならば、まだ救いはあったのですが、有人兵器として見た場合でも駄作でした。
装甲は薄いし主砲も小口径で威力がありません。
これでどうやって勝つつもりなのか疑問しかないよねー。
.
そんな腐りきったサンマグノリア共和国の市民と認められているアルバの頭の中もオお察しです。
自分たちは戦場にでることも無く、実際の戦闘を家畜であるエイティシックスに任せきりでした。
戦況は著しく不味いのですが、戦況放送は優勢となっているんだよ。
これには理由があって、開戦して暫くたったころ、ギアーデ帝国の通信を傍受できなくなりました。
ギアーデ帝国はレギオンの反乱に遭い滅亡したと考えられていました。
破壊したレギオンを回収できていたので、レギオンには活動限界時間が定められていると判明しました。
あと二年レギオンの攻撃に耐えれば、レギオンは活動を停止すると予想されていたのでお気楽になれていたようです。
しかし、この予想は裏切られる事になってしまいます。
そんな腐った共和国の軍隊に配属されたのがヴラディレーナ・ミリーゼ少佐です。
通称はレーナね。
.
彼女は優秀で飛び級で少佐に抜擢された優秀な軍人でした。
ヤル気のない同僚たちを苦々しく思いながらも与えられた任務に没頭して行く事になります。
共和国の軍人は殆ど仕事をしていません、サボって遊んでいるのが常態化していました。
こんな事をしていられるのも、戦闘方式のお陰でした。
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共和国の軍隊は無人兵器ジャガーノートを遠隔操作してレギオンを破壊する方式を取っています。
しかしジャガーノートにはエイティシックスの人間が乗っているので戦闘を彼らに任せきりにしていました。
ジャガーノートに乗るエイティシックスの事をプロセッサと呼んでいます。
アルバの軍人が戦闘を監視するは最低限の軍務なのですが、それを放棄していました。
この監視業務を行う者の事をハンドラーと呼びます。
反乱が起こらなかったのは開戦当初のエイティシックスの人々が高潔だったからです。
彼らは権利を奪われたのですが、国を守るのは市民の義務と考えて戦地に赴いたようです。
アルバがエイティシックスに対して一人従軍すれば家族を一人市民に戻すと嘘を喧伝したのも理由の一つでした。
しかしその約束は当然ですが果たされる事はありませんでした。
兵器の性能で劣っているので戦死者続出でエイティシックスは数を減らしてしまい反乱を企てるには人手不足となりました。
.
レーナは優秀だったようです。
彼女はスピアヘッド戦隊と呼ばれる精鋭部隊を任される事になります。
五年で退役になるようなのですが、三年以上の隊員ばかりが集められた精鋭部隊でした。
レーナはエイティシックスも人間だと考える心優しい変人(共和国の人間にはとても珍しい)なので隊員たちと仲良くなろうとします。
この段階のレーナは自分でも気付かない内に大いなる過ちを起こしていました。
彼女は戦闘時のコールネームで意思疎通を図ろうとしていました。
.
意思疎通は感覚の同調を行う事で実現している音声通信を使っていました。
これが凄い技術なんですよ。
人間の共同無意識に干渉する事で実現されているようです。
視覚の同調も可能なようなのですが、失明の危険があるので音声の同調だけに留められていました。
電話のようなもののようです。
首の後ろに怪しげな機械を装着して行われています。
.
最初は部隊長のアンダーテイカーだけが会話に応じてくれていました。
お互いに顔を見る事も無い交流が始まりました。
アンダーテイカーには担当したハンドラーが発狂してしまうとの噂がありました。
レーナは恐る恐る会話を始めたのですが話してみると実直そうな印象を受けています。
アンダーテイカーの戦闘は恐ろしく的確な行動を取る脅威的なものでした。
ジャガーノートの能力を超えた戦果を上げていました。
.
アンダーテイカーには悪癖がありました。
哨戒任務もあるのですが、彼のスピアヘッド戦隊はそれを行っていませんでした。
恐ろしい事にアンダーテイカーは五年も前の報告書を使いまわしていました。
どうせアルバは報告書なんて読まないでしょと考えられていました。
レーナが全ての報告書を呼んでいるのでキチンと提出するように命じても改善はされませんでした。
しかしレギオンの出現を早期に察知したり、レギンオンの配置を的確に掴んでいました。
彼には何か秘密があるようです。
.
レーナが根気強く毎晩同調を行っていたので徐々に隊員も会話に参加するようになってきました。
しかし隊員たちはレーナの事を仲間だとは思っていませんでした。
現実を何も知らない正義感に駆られただけのお嬢様だと思っています。
あるときレーナの事をこう指摘してしまいました。
「ハンドラー・ワン。貴女は処女だな」
吃驚したレーナは飲んでたお茶を吹いてしまいます。
発言者は慌てて訂正します。
「・・・っあ!すまない間違えた!処女みたいだな、だ!」
周りで聞いていた隊員たちは笑いを堪えるのに必死になっていました。
.
この発言を行ったのは、カイエ(キルシュブリューテ)という少女隊員でした。
彼女も戦歴の長い凄腕のプロセッサーです。
このときのレーナはカイエの名前を聞いていないので知りませんよ。
カイエはレーナの事を悪い人じゃないと言って、これ以上、同調をしてこない方が良いと言ってきます。
これはカイエの気遣いだったんだと思います。
.
次の戦闘でカイエが戦死してしまいました。
ジャガーノートは四足歩行なので湿地帯での歩行を苦手にしていました。
共和国は戦域の地図の管理も適当だったので、作戦域に湿地帯があると気が付きませんでした。
本国の監視室から戦況を監視していたレーナが気が付き警告を発しました。
「そっちは駄目です、キルシュブリューテ!」
しかし遅かった、カイエのジャガーノートは湿地帯に足を取られてしまいレギオンの攻撃を受けてしまいます。
彼女の機体は殴り倒されたようです。
ジャガーノートの防御力は殆ど無いも同然なので衝撃で戦死してしまったようです。
機体は大破したわけではありません。
カイエの救出に向かうと言い出す仲間も居たのですがアンダーテイカーが止めました。
.
レギオンが友釣り作戦を行っているので回収に向かうと被害が増えてしまうと指摘します。
結局、カイエの機体に攻撃を加えてから戦闘を継続する事になりました。
なんで攻撃したのか不思議だったのですが、後でその理由が判明します、とっても悍ましい理由がありました。
.
戦闘終了後、レーナがキルシュブリューテの戦死は残念でしたと悲痛な通信を送ります。
そこで隊員の一人から痛烈な罵倒を浴びる事になってしまいます。
彼らは一人で静かにカイエの冥福を祈りたかったようなんだよ。
そこに無神経にも介入してきたレーナが許せなかったようなんです。
ここでハンドラーとプロセッサーの意識の違いが表面化しました。
.
レーナは偽善者と罵られます。
暇つぶしとしてレーナの会話に付き合っていたけど、仲間だと認めた訳ではない。
残念だなんて言って欲しくないと言われてしまいます。
レーナはまったく理由が分からず困惑していました。
彼らが怒っている理由を聞かされレーナは愕然としてしまいます。
「僕達の名前さえ、一回だって訊いたことがないじゃないか!」
痛烈ですねー。
.
レーナは自分はエイティシックスの事を家畜扱いしていない、人間として接していると思っていたので、その衝撃は大きかったようです。
確かにねー、彼女は全ての会話をコールサインを使って行っていました。
戦闘時の会話はそれでも構わないと思いますが休憩時の会話もそれで行っていたんだよねー。
これは糾弾されても仕方ないね。
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レーナを糾弾したのはセオという少年でした。
彼が激高したのには理由がありました。
セオは且つてアルバの戦隊長の下で戦っていました。
その戦隊長はエイティシックスだけに戦わせるのは共和国軍人の矜持に反すると考えて前線に志願してやってきた人でした。
セオたちはそんな戦隊長の事を嫌っていたのですが戦隊長は仲間になろうとしていました。
そんな戦隊長もセオたちを逃がす為に撤退戦で殿を務めて戦死してしまいます。
レーナの取ったカイエを悼む態度が死んだ戦隊長を思い出させたようです。
セオは死んだ戦隊長を尊敬するようになっていたので彼の姿と重なったレーナが許せなかったようです。
.
消沈してしまったレーナはその日の夜、恐る恐る、同調を行いました。
怖くて全員と同調することが出来なかったのでアンダーテイカーだけと同調を行います。
レーナは今日の自分の軽率な振る舞いを謝り、隊員の名前を教えて貰う事になります。
アンダーテイカーは隊員の名前を全て教えてくれましたが自分の名前を教える事を忘れていました。
アンダーテイカーはシンエイ・ノウゼンと言う名前であると判明します。
.
彼の名前を聞いたレーナは驚く事になりました。
ここに強い運命を感じます。
レーナが共和国人にしては珍しくエイティシックスを人間扱いする性質を備える事になったのには二つの理由がありました。
彼女の父親は軍人で有色種を家畜とする事に反対意見を唱えていました。
自分の娘に現実を見せてエイティシックスを家畜と考える事は間違いだと教えようと考えます。
哨戒機に乗り込みレーナを連れて戦場を見せる事にしました。
立派な教育方針だとは思いますが父親は一つ忘れていた事がありました。
戦場には敵の対空砲が設置されていたんだよ。
この時期の共和国軍は空中からの哨戒なんかしていなかったので忘れていたようです。
哨戒機は撃墜されてしまいます。
.
レーナの父親は死んでしまいました。
レーナは無事に生き残っていたのですが、レギオンに囲まれてしまいました。
そこに救援にやってきてくれたジャガーノートが居ました。
それに搭乗していたのが、ショーレイ・ノウゼンと言う人でした。
レイは、自分は共和国市民だ、国を護って戦うのは市民の義務で誇りだと言っていました。
この人がシンのお兄さんでした。
.
レイに助けられた事をレーナが説明すると、シンはそれは兄ですと認めます。
レイは弟に会うまでは死ねないと言っていました。
前にシンが兄を探していると言っていたのでレーナはシンに会えたか確認していました。
非常な現実を知る事になってしまいます。
シンはレイは五年前に戦死したと教えてくれました。
シンが兄を探していると言っていたのには悍ましい理由があるんだよねー。
レーナは無神経な発言だったと詫びますがシンは全く気にしていないようでした。
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レーナは隊員一人ひとりから名前を聞き出し、自分も名乗って自己紹介をやり直しています。
隊員は手酷く罵倒されたレーナがもう同調してこないだろうなと考えていたので驚く事になりました。
少しずつ隊員たちとの交流が深まっていきます。
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レーナはシンと同調したハンドラーが発狂してしまうって噂の真相を体験する事になりました。
レギオンは基本的に単調な思考で行動しているのですが、数少ない優秀な機種が存在していました。
それはシンたちが黒羊と呼んでいる隊長機でした。
シンは黒羊の存在を感知していたのでレーナを心配して同調を切るように進言しました。
いきなりな申し出にレーナは素直に応じる事が出来ずに同調を続けてしまいました。
そしたら、無人機であるはずのレギオンから断末魔の声が聞こえてきました。
「おかあさん」「助けて」「あつい」「ママ」「死にたくない」と悍ましい声が聞こえてきました。
レーナは発狂しそうになっています、彼女を心配したシンは同調を切って戦闘行動を開始しました。
.
戦闘には勝利しましたが、この戦闘中にカイエの断末魔の声が聞こえてきました。
隊員たちはカイエが連れ去られたのか?と言ってますね。
亡者の声を聞いてしまったレーナはもう同調してくる事は無いだろうと隊員たちは考えます。
これまでのハンドラーは皆、シンとの同調時にこの声を聴くと除隊するか発狂してしまっていました。
レーナは根性がありました。
彼女は再び同調してきて、声の原因を教えて貰う事になります。
.
レーナが聴いた声は戦死したエイティシックスの声でした。
レギオンたちは帝国が滅んだ事で整備が行われなくなっています。
レギオンの自律機能を司るパーツには稼働限界時間が設定されています。
整備がされないので、いずれ機能停止に陥ってしまいます。
そこでレギオンは自律系のパーツを交換する事にしたそうですよ。
交換用のパーツとして使われたのが戦死したエイティシックスの脳でした。
.
損傷の少ないエイティシックスの死体から脳を回収してコピーして代用品にしているようです。
死ぬ寸前の思考がコピーされるようなので断末魔の声が聞こえてくるようですよ。
全く悍ましいですねー。
しかしこの事実により共和国の思い描いていた甘い戦争終結の考えは瓦解する事になりました。
レギオンには稼働限界時間は無くなっていた事実が判明してしまいました。
さらに悪い事に人間の脳のコピーを使うようになっているのでレギオンの思考力が向上していることまで分かってしまいました。
.
シンが兄を探していると言っていたのは彼の兄の脳もコピーされて使用されていたからでした。
シンは兄の脳をコピーした機体を見つけ出し破壊するつもりでした。
.
シンに備わっているレギオンの声が聞こえる能力は幼少期から備わっていたテレパシー的な能力が強化されたものでした。
シンの家族は共和国の第一区画に住んでいました。
隣の家に住んでいたのがレーナの親友のアネットです。
シンとアネットは幼馴染でした。
しかし戦争が始まり有色種を家畜として強制収容所に送る事になってしまいます。
アネットの父親とシンの父親は親友同士でした。
アネットの父親はシンの一家を匿おうと考えていましたが、アネットは反対してしまいました。
これがアネットの後悔となり、彼女はエイティシックスに対して冷淡な態度をとる原因となっていました。
アネットの父親は脳科学の学者で同調を行うシステムの開発に従事する事になりました。
.
非人道的な研究が行われたようです。
同調システムを完成させる為にエイティシックスの子供が使われたそうです。
アネットの父親は心を病んでしまい自殺してしまいました。
自責の念に駆られたアネットは父の研究を引き継ぐ為に科学者として軍に志願したそうです。
.
収容されたシンの両親は従軍すれば残った家族を市民に戻すとの共和国の約束を信じて従軍して戦死してしまいます。
両親が死んでしまい、心が弱っていたレイはシンに当たってしまいました。
一人従軍すれば家族一人を市民に戻すと言われていたので母親が従軍したのはシンが居たからだ、お前なんて居なければ良かったんだと言ってシンの首を絞めて絞殺しようとしてしまいます。
兄弟は教会に預けられていたのですが、レイの暴挙に気が付いた神父に蛮行を止められました。
神父に止められて正気に戻ったレイは自分が仕出かしてしまった事を後悔する事になりました。
自分が守らなけばいけない弟を殺しかけてしまった、何てことをしてしまったんだと後悔しますが、シンの顔を見る事が出来ず、謝る事が出来ないまま従軍する事になってしまいます。
.
幼かったシンはレイに言われた母親が死んだのはシンのせいだとの言葉が忘れられませんでした。
レイが戦死するとシンの元に徴兵命令がやってきました。
同時にレイの声が聞こえるようになりました。
シンはレイの脳を探す為に従軍する事になりました。
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レギオンが自壊しないと知ったレーナはこれまで以上にシンたちに効果的な支援を行う事にします。
彼女の支援の効果でスピアヘッド戦隊は壊滅する事無く戦い続けていました。
しかし、一番戦闘の激しい地区を担当しているので戦死者が出ていました。
戦死者の数が戦隊を維持する事が不可能な状態まで増えてしまいます。
レーナは補充要員を軍上層部に申請しましたが、受け入れては貰えませんでした。
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困り果てたレーナは父親の友人だった准将にお願いしましたが、補充要員はやって来ませんでした。
そんなレーナを見かねたスピアヘッド戦隊の隊員は彼女に真相を教えてくれました。
スピアヘッド戦隊が配属された戦域は長らく生き残ったエイティシックスを処刑する為の場所だと教えてくれました。
本来であれば、長く戦場を生き抜いた彼らの戦術を共有して戦況を優位にする為に役立てようと考えるよね。
しかし外道な共和国が心配したのは生き残った優主なエイティシックスの反乱でした。
優主な彼らが怖いので激しい戦域に放り込んで抹殺しようと考えたそうだよ。
レーナは呆然としてしまいます。
.
それでもレーナはシンたちが生き残れるようにと戦闘指揮を執り続けました。
彼女が頑張り過ぎたので、エイティシックスを葬り去る為の最期の命令が下されてしまいます。
これがフザケタ命令でした。
軍籍を抹消の上、乗り込むジャガーノートの味方識別コードが消されます。
一か月分の物資を積み込んでレギオンの支配地域に偵察に迎えとの命令です。
勿論、後退は許されません、戻ってきても識別コードが抹消されているので共和国の兵器で撃たれる事になります。
黙って死にに行けって命令でした。
これを「特別偵察任務」と呼んでいます。
レーナはふざけんじゃねーと憤りを見せますが、シンたちはこれで自由になれると嬉しそうにしていました。
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レーナは父親の友人である頼れるジェローム小父様、カールシュタール准将の元に向かいます。
彼に特別偵察任務の撤回をお願いに行きました。
しかしジェロームはレーナの要求を受け入れる事は無く、これが民主制国家である共和国の市民が望んだ事なんだと諭していました。
ジェロームは人間が民主主義を手に入れるのが早すぎたんだと諦念を示します。
彼は全てを諦めてしまったようです。
しかしレーナは不屈の闘志でスピアヘッド戦隊に貢献する方法を模索します。
彼女は本当に稀有な人材だよ。
.
いよいよスピアヘッド戦隊が特別偵察任務に出発する日がやって来ました。
生き残りの隊員は五人になってしまいました。
シン、ライデン、アンジュ、クレナ、セオです。
同調してこないレーナに一抹の寂しさを感じているようでした。
ここまで仲良くなったのねー。
.
シンにはこの任務中に果たさなければならない大目標がありました。
レイの操るレギオンを見つけ出して破壊するって大目標を達成する必要がありました。
お互いに知る由もない事ですが、レイはシンを助けようと考えていました。
シンの脳を回収して自分が彼を護って行こうとの決意を持っていました。
これは哀しいですね。
シンはレイを解放する為に彼の脳がコピーされたレギオンの破壊を目指していました。
レイがシンを迎えに来ていたので行軍を始めて早々に対峙する事になります。
.
レイの破壊をシンに任せてライデン、アンジュ、クレナ、セオはレイの機体が戦闘域の情報を収集するのに使っているレギオンを破壊して回る事になりました。
しかし敵が多すぎて大ピンチになってしまいます。
そこにレーナからの同調が行われました。
彼女はライデンの視覚に同調する事で共和国陣地からミサイルによる砲撃を行いました。
.
特別偵察任務の出発時にレーナが同調していなかったのはシン達を支援する為の準備に手間取っていたからでした。
レーナは視覚同調を行う為に喧嘩別れになっていたアネットの家に向かいました。
アネットを説得するときのレーナは悪魔のような笑顔を浮かべています。
色々と吹っ切れてしまったようですね。
そしてアネットにシンの存在を教えて協力させる事に成功します。
アネットはシンの生存を知り喜びます。
.
視覚同調は失明の危険性があります。
危険を犯してまで自分たちに肩入れするレーナを咎めていました。
さらに許可もなく無断で兵装を使用して命令違反だろとも言っていました。
レーナの事を心配しているようです。
しかしレーナはすぐに視力が失われるわけでもない、命令違反など精々減給が降格程度。
死ぬ訳ではないと言ってライデンの反論を封じてしまいます。
レーナは軍本部や政府は道理を弁えてないんだ、こっちが従ってやる義理は無いと断じました。
完全に吹っ切れちゃったようです。
レーナの支援でレギオンを掃討する事に成功しました。
.
シンはレイと激しい戦闘を継続中でした。
一度レイの攻撃を受けてしまいシンは気絶してしまいます。
シンを助け出そうとしているレイのレギオンは慎重にジャガーノートのコックピットを開こうとしています。
そこが隙になりました。
動けないシンを支援する為にレーナが砲撃を行います。
狙撃手のクレナに正確なレイの座標を教えるように命じます。
砲撃すればシンも巻き込まれると思ったアンジュとセオは悲鳴を上げますがレーナには考えがありました。
これはレーナが幼い頃に父親に教えて貰った知識でした。
彼女は信管を抜いた徹甲弾を撃ち込みました。
レイの乗るレギオンに命中して吹き飛ばす事に成功します。
この時にレギオンの装鋼に歪みができたようです。
気が付いたシンがレイに接近して隙間から砲撃を行いました。
.
着弾するまでの数舜の間にレイの意識がコピーされた騎体から液体金属の腕が伸びてきました。
シンの乗るコックピットに侵入してきて彼の首を絞めます。
シンはまたも絞殺しようとするのかと考えますが違いました。
レイのコピーは腕を通じてメッセージを発してきました。
「・・・ごめんな」
砲撃が着弾してレイのレギオンは破壊されました。
最後にレイの真意を聞けてシンは満足したようです。
.
周囲のレギオンを一掃したスピアヘッド戦隊はいよいよハンドラーの監視が届かないエリアに入って行く事になります。
レーナは別れがたいと思っていました。
ここでレーナの本心が吐露される事になりました。
レーナは「おいていかないで」と言ってしまいました。
.
状況を考えるとこれはおかしなセリフです。
レーナはアルバでありエイティシックスを追い出す側なんですよね。
ここにいたって、彼らを人間だと考えているレーナが真の意味で彼らを人間だと考えていると分かりました。
レーナの「おいていかないで」を聞いてライデンは「いいな、それ」と言っていました。
「俺達は追われるんじゃない。行くんだ。どこまでも、行けるところまで」
最後にシンガ「先にいきます。少佐」と言って旅立っていきました。
レーナはワンワン泣いてしまいました。
.
彼らが旅立った後、レーナは彼らが生活していた前線基地を訪問する事にしました。
ジャガーノートの整備を担当していたアルドレヒト中尉が迎えてくれます。
彼はレーナと同じアルバでした。
彼の妻が有色種で娘共々収容所に送られる事になったそうです。
彼はそれが我慢ならなくて市民権を取り戻す為に志願兵となったそうです。
しかし戦場で負傷して療養している間に妻と娘が徴兵されて戦死したそうです。
彼はシンの能力を知っていて妻と娘の声が聞こえるか教えて貰ったと言っていました。
幸いと言えるのかな?彼の妻と娘の脳はコピーされていませんでした。
以来ここで整備兵として暮らしいてるそうです。
.
レーナはシンの部屋でスピアヘッド戦隊結成時の写真といくつかの手紙を入手しました。
「こんなもんをわざわざ探して見つけたんなら、あんたは本物の馬鹿だ」ライデン。
「名前書いとく。どうせあんた、今度は誰が誰だかわからないって泣くんだろうから」セオ。
「猫、もらってやってよ。善人ごっこのついでに、いいでしょ」クレナ。
「名前はまだ、つけていないから。可愛い名前を少佐がつけてあげてくださいね」アンジュ。
「いつか、おれ達が行きついた場所まで来たら、花でも供えてくれませんか」シン。
彼らはレーナが兵舎にやってくると思っていたようです。
お互いを信じあってたんだなと分かり悲しさが増しました。
スピアヘッド戦隊はもう生きていないと思われます。
.
特別偵察任務で吹っ切れたレーナは以降も精力的にハンドラーを続けました。
プロセッサーを使い潰すかのような指揮を執る彼女はいつしか「鮮血の女王(ブラッディレジーナ)」と呼ばれるようになりました。
レーナは奮戦したようですがシンの予想通りに共和国は滅亡する事になりました。
防御陣地をレギオンに突破されてしまい、85の区域に侵入を許してしまいました。
それでも共和国の市民は、罪も無いのに無残に死んでいく己を嘆いていたそうです。
本当に救いが無いですねー。
.
そんな中レーナは生き残りのプロセッサーを束ねてジャガーノートによる抵抗を続けていました。
アネットに裏設定を仕込ませたとあるので彼女も存命のようです。
共和国の滅亡から二月ほどたった頃に遥か東、レギオンの支配域の向こうから救援がやって来ました。
やって来たのは共和制ギアーデ連邦の軍隊でした。
レギオンに滅ぼされたと思われていたギアーデ帝国は滅んでいませんでした。
開戦直後に革命が起こって共和制に移行したそうです。
以降レギオンとの戦争を続けていました。
.
連邦の軍隊は85区に入る前に収容所や前線基地の生き残りを助けていたので、その惨状も目にしていました。
救援部隊の司令官が真顔で共和国の大統領や高官たちに、そんなに色が嫌いなら、国旗も真っ白にしてしまえばよかったのではと言ったそうです。
連邦は共和国の生き残りに支援を行ってくれました。
しかし国交が途絶えていた間に共和国が行っていた家畜政策が判明して態度が冷めて行きました。
それでも最低限の支援だけは行われました。
お前たちはクズだが、クズに対してもこちらは同じことをして同じクズには成り下がってやらない。
恥じる者だけ恥じろ、それも出来ないブタなど知ったことかっていう無言の断罪を行いました。
しかしねー、生き残りの市民の何割が、恥じ入る事が出来たんだろうか?
罪深い共和国の市民の殆どはブタのままだったように思えるよ。
.
連邦は共和国奪還にあたり、兵力増強の条件として連邦への旧共和国軍将校の派遣を求めました。
奪還部隊の指揮官、あるいはその補佐を務める事になります。
殆どの将校は遊んでいただけなので躊躇していましたがリーナは立候補します、立派な心がけですねー。
.
連邦の介入で戦線は大きく挽回されて、シン達が向かった先までが平定される事になりました。
レーナは連邦の高官に連れられてその場所に向かう事になりました。
その場所は硝子ケースで覆われて保全されていました。
そこには五機のジャガーノートの残骸と一機のスカベンジャーが置いてありました。
スカベンジャーは戦闘終了後に残骸を回収する自律型のロボットです。
スカベンジャーはシンに懐いていたファイドのようです。
シンの集めていた戦死した戦友のネームプレートもありましたね。
そこは連邦側の境界線の近くでした。
シンたちは長い行軍が行えたようです。
五機のジャガーノートの残骸が残されていたので彼らは最後まで一緒だったようです。
.
レーナはまだシンたちが到着した場所に自身は到着できていないと考えます。
レーナはそこは死んだ戦士が辿り着く場所だと考えているようです。
生きている自分にはまだやれることがあると考えて花を手向ける事はしませんでした。
.
レーナは高官に連れられて今後指揮を執る事になる部隊を紹介されます。
リーナは大佐に出世したようですね、ミリーゼ大佐と呼ばれていました。
.
そこは何らかのセレモニーの会場のようですね。
連邦の大統領も来ていました。
大統領の元に歩み寄るリーナを見ている士官が彼女の事を話しています。
「なあ・・・本当にアレか?なんつーか・・・思ってたのとだいぶ違うんだが」
「色々あった、ということだろう。こちらが色々あったのと同じように」
「なんだっけ、”鮮血の女王”だっけ?趣味悪いなあ。ありえないよね似っ合わない」
「ねえ、あたしたのことすぐにわかるかな」
「うーん・・・気づいてくれたら嬉しいけど、気づかないのもそれはそれで楽しそうよねぇ・・・」
あれあれ、レーナの事を知っているようだよ。
.
リーナが挨拶を行います。
「サンマグノリア共和国軍大佐、ヴラディレーナ・ミリーゼです。初めまして」
彼女が気づいていないと知り、一同は楽しそうにしていますよー。
隊長が代表して答礼を行います。
「初めまして、ではありませんよ。もっとも、お目にかかるのはこれが初めてですが」
「お久びりです、ハンドラー・ワン」
そうです、リーナが紹介された部隊は、スピアヘッド戦隊の生き残りでした。
シン達はレギオンの占領地域を突破して連邦に助けられていたようです。
.
ここにきて同調システムが音声だけの会話がメインだった弊害が出てしまったねー。
レーナは兵舎で写真は入手してたけど、解像度が荒すぎて個々の顔は不鮮明だったんだよねー。
確かに顔を合わせた事は無かったのでレーナが彼らに気づかなかったのは仕方ない事だよねー。
随分と仲良くなっていたので、レーナは弄られそうだよ。
.
今度は最初に名前を名乗る事が出来たねー。
良かったね再会できて。
レギオンは強力そうなので厳しい戦闘が待っていそうですが頑張ってくれ。
連邦の兵器システムがどんなものなのか気になりますねー。
まさか、ジャガーノートのような非人道的なモノでは無いよねー。
彼らは指揮官だそうなので、顔を突き合わせて作戦を考えていくのでしょうか?
遠慮のない議論が行われそうです、喧嘩になりそうだよね。

成分美少女正義外道友情敵戦力ラッキースケベ
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